原発事故を身近に感じたあの日を思い出した
にょきにょきプロジェクトメンバーのさちよです。
私は、ある日、『放射線副読本』のことを知りました。
読んでみた感想は、
「何かモヤモヤする。」
「一見、間違ったことは書いてないとは思うんだけど・・・。」
でした。そして
私は、原発事故が起こって避難するまでの数日を思い出していました。
なにもわからない中で選択しなければならなかった
私が、原発事故を身近に経験したとき、栃木県に住んでいました。
見えない放射性物質とそこから出る放射線が、自分や子どもにどんな影響を与えるのか心配でした。
当時、私は妊娠5ヶ月でした。
そして私が住んでいたのは福島第一原発からは、100キロメートル以上も離れた場所でした。
しかし、海外からは
「気象条件から計算すると、放射性物質が北東に流れて、その後南に流れるだろう。雨が降れば、空気中にある放射性物質が大地に落ちてくる。今はできるだけ、西に離れたほうがいい」
との情報が届いていました。
放射線に詳しい人に聞くと
「地球上で初めてのことが起こっている。胎児への影響は誰にも分らない」
とのことでした。
日本のテレビでは「直ちに命に別状はない」と盛んに言われていました。
それを見て、私は「だからって、ゆくゆくは影響があるのかもしれない。」と感じていました。
”私よりも長い人生のある子どもにとって、必要な選択は何なのか。わからないけれど、ひとまず関東を離れよう。”
幸いにも私の実家は滋賀にあったので、電車が動いた15日の早朝に西に移動したのでした。
また同じことが起こったら・・・
あの時に得た数少ない情報は、誰もが、何もわからない中で、どの情報も命を守るためにもたらされた貴重な情報だったと思います。
あの経験があって、この副読本を読んだとき
文部科学省の書いた放射線副読本には、あの時に感じていたこと、貴重だった情報が、書かれていないように感じました。
放射線副読本というのに、放射線の一つの側面しか書いていないようで、
「メイクはばっちりなのに、まだパジャマを着て外に出ようとしているような・・」
ちぐはぐな感じを受けました。
それから「また、同じようなことが起こった時、放射線副読本は、あの時の私にとって役に立つものだろうか?」
そう考えた時、「これでは役に立たない」とも思いました。
では、放射線副読本に何が書いてあれば、役にたつものになるのか?
それを言葉にすることができず、モヤモヤとした気持ちの底で、悔しさや憤り、無力さを感じている私がいました。
同じように思っている仲間に出会って
その時に、同じような感覚で、副読本のことを勉強しようという人がいました。
もともと私は出不精なので、そういう集まりに出向くことには積極的ではありません。
でも、この時ばかりは、一人で考えていてもどうにもならず、なにか一つでも見いだせたら、という思いでした。
圧倒的に、知識がなさすぎた
その集まりでは、原発事故後の ”内部被ばく” の危険性をわかりやすく、全国で話されている守田敏也さんが来てくださっていました。
詳しい資料を準備して、わからない私にも、わかりやすく説明を試みてくださいました。
なのに、家に帰って、放射線副読本を見ながら、もらった資料を比べてみると、放射線副読本のなにかが気になるのに、それが言葉にできない。
そんな、もどかしさを感じました。
みんなも一緒だった
そのもどかしさを、集まりを企画してくれた「しずえさん」に話すと、彼女も同じような思いでいると分かりました。
そこで、何にモヤモヤするのか、それさえも言えないのだから、「まず自分のモヤモヤを言葉にしてみよう。その言葉の答えを探してみよう。」と、電話で話すようになったのが、スッキリ読み解きBOOKを作るきっかけでした。
そして、私たちより一足先に、いろいろ調べながら、見開きでわかりやすい読み解き本を一人でつくろうとしていた「あゆみさん」
原発事故の前から、被ばく2世として、放射性物質や放射線のことをわかりやすく発信しつづけている「守田敏也さん」が加わり、
「放射線副読本すっきり読み解きBOOK」の作成がスタートしたのです。
何度も話を重ねたり、疑問に思うことを出し合って見えてきたもの
私はいまだに、放射性物質や放射線が、私たちの生活にどんな影響があるのか、わかっていないことがたくさんあります。
そのたびに、何度も同じような質問を、みんなに投げかけてきました。
そろそろ、読み解きBOOKが出来上がろうとしているときでさえ、出てくる疑問をみんなに伝えてきました。
みんなは、私がどんなにむちゃなボールを投げても、聞いてくれて、私の思いに寄り添ってくれました。
少数派の考えや言い分が、全く取り上げられないことがあたりまえで、多数決が正義、のような社会で、
どんなちいさな意見も、まずは聞いてみて、よりそって一緒に考えてみる。
そのことの大切さを、強く感じた時間でした。
知識はもちろん大切です。でも知識を自分たちの暮らしに生かすには、知識だけでなく、多数決が正義でもなく、
一人一人の考えや思い、意見が、大切に尊重されることなのだと、貴重な体験でした。
そうして出来上がった「放射線副読本すっきり読み解きBOOK」
このような流れで作った「放射線副読本すっきり読み解きBOOK」。
- 文部科学省の出した放射線副読本をみて、ただただ、悲しみや怒りがわいてきて、個人ではあらがえないような大きな力の前に無力感に襲われてしまった方。
- 放射線副読本に大事なことが書かれていないと思うのに、それをどう伝えたらいいのかわからなくてモヤモヤしている。
- 周りの人たちとも話し合いたいけれど、とても興味を持ってもらえそうにないし、どう話したらいいのかわからない。
- 子どもたちと話し合いたいけれど、内容が難しくて考えが止まってしまう。
- 放射線副読本のことが気になってネットで情報を集めてみるものの、情報が多すぎて本当に必要な情報がわからなくなってしまった。
といった、私たちと同じような方たちのお役に立てるかもしれません。
なぜなら、私たちが、何度読んでも、放射線副読本の中に書かれていることを整理できなかったからこそ、
何が書いてあったら、整理できるのかを、何回も話し合い、書き直しを重ねてきたからです。
そうした積み重ねを経て、今回の「放射線副読本すっきり読み解きBOOK」には、以下のような構成にしました。
見開きで1ページずつに対応
初めて読む人が、何がどこに書いてあるのか、わかりやすいように、1ページごとに読み解きページをつくりました!
わかりやすい対話形式
難しい解説ばかりにならないように、登場人物をつくって、会話形式にしました!